司会・ビジネスボイスPro講師 森藤 りか

コラム 声×言葉

コラムVol.7 「一生の思い出に残る感動のシーンを!」2018年10月 

コラムVol.7 「一生の思い出に残る感動のシーンを!」

スポーツ、読書、芸術、行楽、食欲、恋…
何をするにも気持ちの良い季節ですね。
あなたの秋は、何の秋ですか?
素敵な秋をお過ごし下さいね。

人は、美しい景色や綺麗なものを見た時、美味しいものを食べた時、
ずっと行きたかった所にやっと行けた時、どうしてもできなかったことがついにできた時、心がふるえますよね。感動します。

感動は少ないよりたくさんあった方が良いなぁと思いませんか?
そこで今日は、「感動」について考えてみたいと思います。

感動とは?

私は司会として感動のシーンをお手伝いさせて頂けた時、司会者冥利につきると感じます。
では、人はどんな時に感動するのでしょうか?
それが分からなければ、感動を生み出すことは出来ません。

まず感動という言葉を辞書で調べてみると、美しいものや素晴らしいことに接して強い印象を受け、心を奪われること。とあります。
感動したとき、人は心を動かされて、一生の思い出に残ることになり、その後の人生に何かしらプラスのエネルギーになる。
そんな感動のシーンを司会で関わらせて頂いた方に、実感して頂きたいと私は思うのです。

大学生(男110名、女114名)を対象とした、感動に関する調査結果がありましたので引用させて頂きます。

感動を経験した際、頻繁に含まれていると思われる感情の種類は、
① 喜び・嬉しさ、②悲しみ・哀しみ、③共感・同情、④驚き、⑤尊敬、⑥達成感、⑦素晴らしさ。
と言うことでした。

また、感動するのに必要な条件の主なものは、
a 感情移入・共感できること、
b人情に関すること、
c 一生懸命な、健気な姿、
d 努力・苦労の成就、
e 期待・希望が実現すること、
f その事柄に没頭していること、
g 意外・予想外なこと、
h 周囲に同じ状態の人がいること、
i 通常では、自分ではできないこと、
j 興味・関心のあること、
k 今までにない経験であること。

納得の調査結果ですね。
近々でたくさんの方々が感動したと思われる出来事を思い出してみましょう。

今年、第100回夏の甲子園は、秋田の金足農業高校の活躍に感動しました。

全米オープンテニス2018で優勝された、大坂なおみ選手からも感動を頂きました。

山口県の山で行方不明になった2才の男の子、よしきちゃんを無事発見したと言うニュースにもホッと安心し、見つけてくれたスーパーボランティア尾畠さんの生き方を伝える報道も感動を呼びました。

いずれも、①から⑦の感情の種類とaからkの条件がたくさん満たされています。

サプライズ!

司会させて頂く時には、①から⑦、aからkに含まれる内容を、積極的に取り入れることで、より心豊かな雰囲気を作ることが出来ます。

そして、時には変化球やこっそりサプライズをしかけます。
その時は、準備をしているときからとてもワクワクしている自分がいます。大好物なんだなと思います。

サプライズは、期待していなかったところに、ぐっと来ることがおこってしまうので、より印象に残るのだと思います。
黙って準備してくれていた気持ちまでをもあわせて、大きな喜びに繋がります。

これは、ゲインロス効果やギャップ萌えに近いものでしょうか。

大切なのは実感力

心を揺さぶる司会を極めるため、そして、ナレーションで的確な表現が出来るようにと1年程前から朗読の勉強を始めました。
朗読ライヴにもチャレンジしています。

朗読の魅力について、少しずつ実感できるようになってきました。

朗読は、文字で書いてある作品を「声」にしてより立体的にします。
文字で読んだ時には気づかなかったかも知れないもっと奥の世界、例えば…、覗き穴を覗くとその世界のジオラマが広がっていて、そこにもちゃんと時間の経過や、人々の営みがあることに気づいて、さらにその作品を深く理解でき、共感して頂けるようになるのが朗読なのだと思います。

朗読している時は、ひとつの作品を読み手と聴き手(お客様)が共有します。
お芝居でも歌でも同じです。そのときその世界を共有します。
ただお芝居や歌と少し違うのは、音楽の力や実際の表情や動きを一切使わず、「声」だけで表現するところが、読み手にはもちろん聴き手(お客様)にも力を必要とするものかも知れません。

私は『声×言葉』のお仕事なので、ここはとことん「声」にこだわっていきたいなと思うのです。
自分の中にあるものしか出せないのよ、と朗読の先生はおっしゃいます。
でも作品によっては、経験したことがないことの場合があります。そんな時は、似たような経験を当てはめるのだそうです。

出来るだけ近い経験から生まれる感情が必要なんです。
感情の置き換えです。
実際に心の底で感じている感情。実感。
この実感力を鍛えるのに、朗読はとても役立っています。

涙の感情は気をつけて!

感動に振り回されないことも、司会としては大切なことだとも思っています。

分かりやすく言うと、新婦から両親への感謝の手紙を涙ながらに新婦が読むのは、感動し涙を誘いますよね。本人が書いた本人の気持ちですから、そのまま伝わってきます。

しかし、そのお手紙を司会者が代読させて頂く場合には、つい泣きそうになっても、ぐっとこらえて読みます。
司会が先に泣いてしまっては、伝わりませんし、引きますよね。

苦労された方のご紹介をさせて頂くときも、思わずうるっと来てしまいそうになりますが、頑張ってこらえます。

司会もナレーションも朗読にも、実感力は必要です。
そして、感情をあらわにするのはなく身体の中にしっかりと感情を抱いておくことが大切なのだと思います。

森藤りか