司会・ビジネスボイスPro講師 森藤 りか

コラム 声×言葉

コラムVol.63『言葉選びⅥ』2023年6月

コラムVol.63『言葉選びⅥ』2023年6月

最近、マクドナルドのテレビコマーシャルがお気に入りです。オンラインミーティングの設定で、岡崎体育さんが一瞬画面をオフにしてすぐまた画面に戻って来ると、口をもぐもぐ…何やら食べているような。それを上司の木村拓哉さんが見つけて、優しく「岡崎君、マック食べてますよね。お腹空いちゃった?」と言った後、木村さんも座っている椅子ごとくるっと回って、後ろを向いた瞬間ポテトを口に押し込むというシーン。ポテトにがっつく木村さんの勢いと表情が、とても面白くて大好きです。このCMを見たら、皆様もきっとポテトとかマクドナルドとか、じんわりと食べたくなりますよ。

CMから広がる想像力

これはもちろん、会議中でも我慢できず食べたくなってしまうマクドナルドだということが伝えたいCMなのだと思います。岡崎さんが何かを食べているけれど、最初は画面上に見えていないので、何を食べているのかは分かりません。それを木村さんが、マック食べてますよねと、マクドナルドに限定して言うのは、自分もマックのポテトとコーヒーを準備して、オンラインミーティングに望んでいるからなのだろうなと分かります。本来なら、会議中に食事したら怒られる場面ですよね。二人とも、マクドナルドが好きなのでしょう。その共感が、木村さんの言葉の優しさに繋がり、岡崎さんのハンバーガーとドリンクを持ち上げた時の表情を生み出しているのだろうと深堀りしてしまいます。そしてきっと、岡崎体育さんは、上司の木村さんから可愛がられているのだろうなと想像が広がります。ひょっとしてどこかのタイミングで、例えば、エレベーターで一緒になった時とか、二人はお互いにマック好きという会話を交わした事があるのかも知れません。1本のCMから妄想してしまいます。ストーリーが分かってても、毎回見入ってしまうのは、CMマジック。私がCM好きだからということもあるでしょうけれど、意図を持ってCMは作られるため、心理的に操作されてしまいますね。

余談(エレベータートーク)

このCMでは、オンラインミーティングのその最中にマクドナルドを食べるくらい好きということが伝わりますが、会議のやり取りだけでは、なかなかその人の個人的な傾向性までの情報は得られないものですね。そこで重要になってくるのが、エレベータートークです。会議などが終わった後、エレベーターでご一緒した時、または、すぐにお礼のお電話をしてたりして、ざっくばらんに端的に短い会話を交わします。会の進行についてや、理解度など、または、他の参加者の反応はどうだったかなどの振り返りを行います。このフォローを繰り返し行うと会議の場では分からなかったお客様の反応や課題意識などを把握することができます。お客様側からすれば、メールするほどでもない依頼や公の場では言いづらい率直な要望を伝える機会にもなります。このエレベータートークは実は、重要な情報を手に入れるチャンスタイムなのです。

森藤りか