司会・ビジネスボイスPro講師 森藤 りか

コラム 声×言葉

コラムVol.69『言葉選びⅫ』2023年12月

コラムVol.69『言葉選びⅫ』2023年12月

さぁ、そろそろ年賀状の準備をしているという方も多いと思います。一方、年賀状じまいを考えているという方もいらっしゃるかも知れませんね。いずれにせよ、今後も良い関係性を続けるために、これまでの感謝の気持ちを伝え、これからも連絡し合えるよう丁寧さと相手への思い遣りが大切ですね。今回も、敬語について書きます。

敬語とは、?

相手を敬う気持ちを表現する言葉遣いです。しかし一概にそうとも言い切れません。 相手と距離を置きたいときに、「心の壁」として敬語を使用する場合もあります。 現に、怒っている時や嫌いな相手に対して、敬語になる人もいますよね。 カタイ敬語には相手との距離を遠く感じさせる効果があります。カタイ敬語で通すことで、人との距離を保つことができます。あえてカタイ敬語で、お客様との一線を保ち、お客様から無理な誘いを受けることやトラブルを事前に防ぐこともできる、というわけです。言葉は相手の心理や判断に影響を与えます。丁寧過ぎる依頼の仕方をされると、逆に依頼の内容を承諾しづらくなることもあります。次の3つを比較して下さい。
「~してもらっていい?」
「~していただけますか?」
「~していただくわけにはいきませんでしょうか?」

お客様との距離感を縮めたい時は、、

敬語を崩す事をことをお勧めします。ポイントは相手に不快感を与えないように十分配慮をすることです。まず『TPO』が大切です。オフィシャルなシーンやたくさんの人がいる場面などでは正しい敬語を使いましょう。食事時や喫煙室、行き帰りの道中など、プライベート寄りなタイミングに、周りに会話を聞かれても大丈夫かどうかの環境も確認し、敬語を少し崩します。『段階的に』です。敬語の一部を崩すところから始めます。あるいは、相槌の一部をカジュアルな相槌に変えます。趣味やプライベートな話題、自慢話や武勇伝など相手が話したい話題を聞いている時に「ヘぇ〜!」「うわぁ〜!」と『感嘆詞でカジュアルな相槌』を打ちます。「凄いですね!」「感動するなぁ!」など自分の感情を、相手の目から少し視線を外し、例えば手元の辺りを見ながらつぶやきます。そして、再び相手の目を見ながら「素晴らしいご経験をされていらっしゃるのですね。」と相手を認める言葉はしっかりと敬語で伝えます。さらに付け加えるのであれば「私も真似してやってみよう…」と自分の感情を視線をはずしてつぶやきます。このように、
相槌の最初に敬語を崩し、
その後に続く言葉は敬語丁寧語にして、
自分の感情は視線をはずして独り言のようにカジュアルに表現する、というミックス技を使えば、相手に違和感を抱かせることはありません。

敬語を崩す簡単テクニック

漢字熟語を減らすのもひとつの方法です。「拝見します」を「見ます」に、「頂戴します」を「いただきます」に言い換えるだけでほぐれます。
「お」や「ご」を取るのも効果的です。「お話ししていいですか」を「話していいですか」に、「ご立派です」→「立派ですね」
また、語尾に「ね」をつけることが敬語を崩す方法にもなります。相手の名前をさん付けで雑談に盛り込むのもいいでしょう。
こうしたテクニックをさりげなく使えば、自然に打ち解けた雰囲気を作れます。

そもそも敬語とは、相手を敬う気持ちを表現する方法のひとつです。崩した敬語、カジュアルな言葉遣いをする分、相手への「敬意」を表現する事をお忘れなく。
次回は、「敬意」について書こうと思います。

森藤りか