司会・ビジネスボイスPro講師 森藤 りか

コラム 声×言葉

コラムVol.68『言葉選びⅪ』2023年11月

コラムVol.68『言葉選びⅪ』2023年11月

ぐっと冷える日もあり、人恋しさを感じる季節になってきました。例えばお近づきになりたい人との距離を、さて、どうやって縮めましょうか?前回のコラムから、敬語とタメ口について書いています。ぜひ、意識的に使い分けしてみて下さい。今回もさらに掘り下げて書いていきます。

タメ口を使うカフェ

『友達がやってるカフェ』というコンセプトカフェが東京・原宿に今年の春、オープンしました。「えっ!いらっしゃい!来てくれたんだ!」とタメ口で手を振りながら出迎えられ、「ホント、久しぶり〜。え、何年ぶり?」と席に案内されて、まるで昔から友達だったかのような接客を受けるのだそうです。店員さんは、役者、モデルなど演技経験がある人やエンタメ業界で活動している人に限定し、シミュレーションとロールプレイングで訓練しているそうです。

メニュー名も面白い

「大変そうだから、すぐ出せるので大丈夫だよ」はドリップコーヒー。「たしかラテ美味しかったよね?」は、カフェラテ。「なんだっけ、あの丸いお菓子の…」はクッキー。そして初来店でも「いつも飲んでるやつ」と注文すると、店員がランダムにメニューを選んで提供するので、何が来るのか分からず、さらにドキドキ感を味わえるようです。このメニュー名は、ただ面白いだけではなく、お店のコンセプトを支える大事な骨組みになっているのだと思います。友達感覚を楽しむ工夫です。友達に話しかけるようなセリフがメニュー名になっているので、お客様がメニュー名を言うと、店員さんがタメ口で受け答えをします。注文する=友達感覚の会話が成り立つかたちになるのです。

お客様は神様

日本の大切な文化です。お客様は神様という文化を壊すとかなくすという思いではなく、こういう接客があっていいのではないかと一つの提案で、お客様と店員の目線を等しくしてみた時にどんな体験が生まれるんだろう?と新しい接客を実験しているつもりなのだと、発案者は語っています。今までとは違う、新しい顧客体験ができることが、実際に体験した人から好評を得ているようです。

『友達がやってるカフェ』タメ口効果の大きな好事例ですよね。

森藤りか