司会・ビジネスボイスPro講師 森藤 りか

コラム 声×言葉

コラムVol.20『質問力』2019年11月

コラムVol.20『質問力』2019年11月

先日、ある会議の中で「質疑応答」がありました。その「質問」によって、議題の内容の理解がさらに深まったり、そこを改善したらさらに良くなるよねと気付かされたりもしましたが、ん?責めてるの?自慢したいの?それ、今聞く?と言う質問もありました。会議なので、その時間の目的は、議題である何かを決定し生み出す場所です。答える側「応答」の技術はさておき、今日は「質疑」『質問力』について書いてみたいと思います。

「問い質す」読めますか?

2つの漢字から、言葉の意味はだいたい想像がつきますね。そして送り仮名を見て勘の良い方なら分かります。「といただす」と読みます。「ただす」は「正す」ではなく「質す」と書くのです。疑問・不審の点について、納得するまで質問し、明らかにする。また、真実を言わせようと厳しく追求する。という意味です。「問う」より少し厳しく聞こえます。

「問う」と一言で言っても、微妙なニュアンスでたくさんの類義語があります。例えば、質問、設問、疑問、詰問、査問、審問、愚問… もともと日本語は、文字でニュアンスを伝える文化です。文字の組み合わせを工夫したり、書き言葉の文章でのコミュニケーションから微妙な表現がたくさん生まれました。この「問う」に関しても、です。

「質問」する時に気をつけること。

分からない事をたずねて教えてもらうだけではなく、質問には様々な役割と効果があります。司会の中のインタビューやファシリテートする場面では、「質問」の仕方や内容で、会全体の方向性や仕上がりが変わってしまいます。責任重大なのです。そしてそれは、日常の職場や友人に対しても同様です。

まず、コミュニケーションの手法として、「はい」か「いいえ」など二者択一で答えられるような、回答範囲を限定した『クローズドクエスチョン』と、自由に答えてもらう、回答範囲を限定しない『オープンクエスチョン』という言葉は聞いた事があると思います。初対面の方には、答えやすいクローズドクエスチョンから始めると距離感が近くなるとは言いますが、しかし、大人やビジネスパーソンたちには、物事の理解をより深めるためのオープンクエスチョンが常に求められます。そして質問の目的は、コミュニケーションをとることと関係性を深めることと問題の解決にあると思います。目的を見失わず「質問」を選びましょう。

良い「質問」とは、どういうものでしょう?

インタビューであれば、相手の口から情報をたくさん喋ってもらうような聞き方をします。例えば、「楽しかったですか?」「説明の内容はわかりましたか?」ときくと、答えは、「はい」で終わるでしょう。「どう感じていらっしゃいますか?」「説明を聞かれて、いかがですか?」という聞き方をすれば、何かしら考えて答えて頂けます。相手の意見や体験や体感を質問すると良いと思います。相手を理解でき、会話が膨らみます。

また、相手を追いつめたり、責めたりするような質問はだめです。物事には、表と裏があります。攻撃したくなるような状態でも、プラスの方向で質問をすると良いです。明るい未来を作るための気付きのきっかけになる質問が良いでしょう。スポーツ実況のヒーローインタビューが参考になりますよ。

子供や部下を叱る時、「なんで…なの?!」と言っていませんか?

やめましょう!「なんで?」と聞いていっても、納得する答えに行き着かない事が多いです。さらに言えば、本当に答えが欲しくて聞いているのではありませんね。答えが出ない上に、ストレスやプレッシャーを与えるだけです。この質問では明るい未来は作れません。

自問自答する時も、「なんで?」と問い過ぎると、ストレスになります。

自分にも他人にも「なんで?」という問いを必要以上にしないように心がけましょう。

『質問力』とは?

「質問」すると、相手の潜在意識ヘ2つの力が作用します。この2つの影響を考える事は、とても大切だと思います。

① その人の思考を制限・強制させる力を持つという事。

質問をされると、相手はそのことについて考えます。一生懸命答えようとします。問われるまでは、別の事を考えていたとしても、質問されたその時からは、その質問について考え始めます。相手の思考の制限と強制をしている事を自覚し、思い遣りをもって「質問」しましょう。

② 問いと「答え」はセットだということ。問われると必ず答えを出そうとする力が働くという事。

その答えが「知らない」「分からない」だったとしても、答えを出そうとします。自分にも他人にも「なんで?」という問いをしないようにしたいのは、これが理由です。

『質問力』。「質の高い問い」とは、こんなやり取りではないでしょうか?

「この議案が現実になったらどんな気持ちでしょう?」
「最高に嬉しいと思います!先程頂いた質問で改善策も見えました。支えて下さった皆様に感謝します!」

明るい未来に希望が広がる力になりました。これが『質問力』です。

森藤りか