司会・ビジネスボイスPro講師 森藤 りか

コラム 声×言葉

コラムVol.21『語感を味わう』2019年12月

コラムVol.21『語感を味わう』2019年12月

道路をカラカラと乾いた音をたてて落ち葉が転がっていく様子を目にしました。ふと「木枯らし」と言う言葉が浮かび、情景と言葉が頭の中でひとつになりました。こんなふうに語感を感じる瞬間が、たまらなく好きです。本来の言葉の意味とは一致しなくても、その言葉が纏っている空気感を感じて妙に納得してしまう感覚ですっと心に言葉が入ってくるのです。皆さんも、ありますか?

「木枯らし」

意味と語源を調べてみました。日本の太平洋側地域に晩秋から初冬にかけて吹く、風速8m/s以上の北よりの風のことだそうです。冬型の気圧配置になったことを示す現象で、気象庁からは東京と大阪のみ、木枯らし1号が吹いた事をニュースで伝えます。

関西は今年は例年よりも早く、11月4日でした。関東は今年は発生せずとのことです。ユーラシア大陸から日本に向かって吹いてくる冬の季節風が日本列島の連山に当たり雨や雪を降らせた後、山を越えて太平洋側に吹き抜けるため水分を失い、乾燥した木枯らしとなる仕組みだそうです。

「凩」とも書きます。また、江戸時代には葉を落とした木で作る「すりこぎ」のことを「木枯らし」と言っていたこともあり、この風の呼び名も「木嵐(きあらし)」が「木枯らし」へと変化したと考えられています。

「木枯らし」は本格的な冬が来た事を知らせてくれます。乾燥した強い風が吹く季節です。お肌も枯れないように冬用のケアを始めようとか、マスクをしようとか、そんなことまで、イメージが膨らむ言葉ですね。

「根に持つ」

人を嫌いと思う事はほとんどないのですが、今まで1人だけ、います。その人に一番合う言葉は「強か」。その人のお陰で、「したたか」は「強か」と書くのだということを知りました。嘘をついて人を陥れたり、自分の都合のいいようにするためなら、人の事はどうでも良いという人でした。嫌な想いをたくさんさせられました。今はお付き合いはありませんが、しばらくは恨みに思う気持ちがありました。「根に持つ」と言う状態です。「根」「心の底」からなかなか忘れられない感情でした。

また、ずいぶん経ってからの別の話で、自分のルーツを知りたいと思ったことがありました。自分の「根源」「先祖」のことです。そう思った時「根」という言葉が私の中で繋がりました。「根に持つ」のはやめようと思いました。植物にとっても「根」は大事です。人にとっても「おおもと」「根ざす所」そんな大切なところに、悪い想いを持ち続けるのは良くないのではと気付きました。「根」が腐ってしまいます。そして自分自身を腐らせてしまうのではないかと思いました。より良い葉を茂らせ、美味しい実をつけるために「根」からは良い栄養を吸収したいです。「心根(こころね)」には良い思いを持って生きたいと思いました。

「読む」→「話す」→「語る」

司会のお仕事で、原稿を準備する場合と、ない場合があります。原稿がある場合は、「読む」ことに意識をしすぎないように気を付けます。内容を押さえていれば、語尾の言い回しは多少違っても良いでしょう。そして、人にきちんと伝わるように、そして出来るだけ心地よく「話す」ために、事前に発声練習や滑舌のトレーニングをして本番に備えます。また、自分から「放つ」「離す」言葉に責任を持つ事です。そして一番司会の良し悪しの差が生まれるのは、自分の言葉で「語る」事が出来るかどうかだと思います。

言葉を「売る」のではなく、「舌」を正しく使い、「吾」自分の言葉で「語る」のです。

森藤りか