コラム 声×言葉
コラムVol.13『天皇陛下・皇后陛下から学ぶ言葉の重さ』2019年4月

4月1日、新元号の発表です。まもなく4月30日に明仁天皇がご譲位され、5月1日皇太子徳仁親王が新天皇としてご即位されます。「一世一元」の制に基づき、新元号が始まります。今回のコラムは、改元とご退位に際し、言葉についておもうことを書きます。
天皇制について学ぶ場所は?
万世一系で続いてこられ、明仁天皇は第125代の天皇です。そして、天皇自らご譲位されるのは、江戸時代後期の光格天皇依頼およそ200年ぶりで、生涯天皇であり続ける制度が導入された明治以降では初めてのことだそうです。
天皇についての勉強は、たしか小学校の高学年の社会の授業でほんの一瞬出てきただけだった気がします。昭和天皇とマッカーサーの会見のお話も先生から聞いた覚えがある程度です。天皇制は日本独特のものです。「象徴」という表現もわかりにくいです。分かりにくいと言えども、天皇についてきちんと知らないのは、日本人としてだめだなと反省を致しました。
『天皇メッセージ』との出逢い。
『天皇メッセージ』([著]矢部宏治・[写真]須田慎太郎)という本を読みました。
小学館のホームページでは全文無料公開されていますが、写真も言葉も手元に置いておきたいと思い、私は書籍を購入しました。天皇陛下・皇后陛下が述べられた32のお言葉、そして在位中最後の会見となった2018年12月23日の誕生日会見からは、譲位に関する部分の全文が掲載されています。力強い写真からもとてもメッセージが伝わってきます。
沖縄、基地、原発、憲法をテーマにベストセラーを出して来た著者が今回、天皇について書かれた理由について語っています。
「沖縄訪問時の明仁天皇は、本土で見えている姿と全く違う、非常にアクティブで、はっきりものを言い、行動する姿が見えてくる。しかも『沖縄』という戦後日本最大の矛盾と真正面から向き合い、その苦闘の中から自分の思想を鍛え上げ、『象徴天皇』のあるべき姿を作り上げてきた人だということが見えてくる。これは非常に驚きでした。『ああ、自分はこの人をまったくしらなかったんだ』という驚き。そして『ここに素晴らしい知識人がいるじゃないか』という一種の感動。ひとりの人間、思索と行動を兼ね備えた知識人として、本当に尊敬できる。『そのことをみんなに知ってもらいたい』という出版人としての本能が、この本を書いたきっかけです。」
「『平和国家・日本』という国のあり方について、もっとも深い思索をめぐらしてこられた明仁天皇の言葉をたどりながら、みなさんにもその問題を考えていただければと思っています。」
良い本に出逢えたと思います。是非皆さんに読んで頂きたいとおもいます。日本人に生まれてよかったと思いました。日本人としての誇りを持つこともできました。この本に触れ、天皇陛下・皇后陛下のお言葉に耳を傾けてみたら、色々な事が分かりましたし、様々な感情が溢れてきました。
『I shall be Enperor.』
明仁天皇が15歳の時、学校の英語の授業で「将来、何になりたいか?」という質問に答えたお言葉、『I shall be Enperor.』の紹介から始まります。『普通の日本人だった経験がないので、何になりたいと考えた事は一度もありません。皇室以外の道を選べると思ったことはありません。』
終戦を迎えた11歳の時に書かれた作文も一緒に紹介されています。重責を担う覚悟と孤独を10代の頃から背負ってこられたなんて、私には想像がつかないことです。しかし、想像を絶すると言う事だけはわかります。胸が締め付けられる思いがしました。それから、現在の84歳まで天皇としての役割を果たすことに筋を通されてこられました。美智子皇后の存在の大きさと、美智子皇后の素晴らしさからも学ところがたくさんありました。
天皇は、「象徴」という唯一無二の存在。しかし、生身の人間であること。この度の譲位についても明仁天皇の生き方が表れているような気がします。
言葉の重み。言葉の作用。
立場をわきまえ、影響力を考え、それでも、きちんとした思索のもと、発言をしなければならない時に、どういう言葉を選ぶのか、そして、どこまで言うのか、とても難しいことだと思います。
天皇陛下・皇后陛下が述べられた32のお言葉と解説。
言葉を生業とする身としては、本当に深く深く考えさせる1冊でした。言葉の重み、言葉の作用を知り、言葉を選ぶ力をもっと付けたいと思います。