司会・ビジネスボイスPro講師 森藤 りか

コラム 声×言葉

コラムVol.31『柿ってすごいの?!』2020年10月

コラムVol.31『柿ってすごいの?!』2020年10月

柿食えば鐘が鳴るなり法隆寺」明治時代初期、正岡子規が詠んだ俳句です。この句が詠まれた10月26日を「柿の日」として全国果樹研究連合会のカキ部会が制定したそうです。
秋の味覚のひとつ「柿」。硬めが好きとか、とろけるくらい柔らかくなったものが好きで、種の周りが特に好きとか、好みは人それぞれ。今回は、「柿」にまつわるお話です。

「柿」と「杮」

「柿」(かき)と「杮」(こけら)(材木加工して出た木屑削りカスの意)。
一瞬同じ漢字に見えて、実は違うのです。2つの漢字の違いは、漢字の右部分のつくり部分。「柿」(かき)は「市=なべぶた+巾」ですが、「杮」(こけら)は、つくりの縦棒が突き抜けて1本になっているのです。つまり、なべぶたと巾の間にスペースがあるかどうかなのです。フォントによっては、その区別が難しいものもあるようです。恥ずかしながらつい最近、この違いを知りました。

「桃栗三年、柿八年。」

これは、有名なことわざですね。何事も成就するには相応の時間がかかるという意味ですが、この後に続くフレーズがまだあるというのを22歳の頃、先輩から教わりました。
私が教わったのは、「桃栗三年、柿八年。柚子は九年でなりさがる。梨の馬鹿めは十八年。」
調べてみると、他に「枇杷は9年でなりかかる。」「梅は酸いとて13年。」と続いたり、地域によって違うフレーズが受け継がれているようです。
また、実際にはどうかというと、種から育てたなら大体言葉通りのようです。今は、昔と違って、桃も栗も柿もユズも接ぎ木苗が主流で、接ぎ木苗は種から育てた苗より結実が早いそうです。梅も梨も柚子も、3年くらい。枇杷は、5、6年。梨と柚子は、品種や条件によっては10年くらいかかる場合もあるそうです。
栽培技術の進化が、ことわざに影響を及ぼしていくのは、仕方のないことですね。

新型コロナウイルス不活化!?

技術の進化と言えば、奈良県立医科大学が先日、「柿渋が、新型コロナウイルスを1万分の1以上のレベルにまで不活化することを、世界で初めて、実験的に確認するに至りました。」
と発表しました。唾液と新型コロナウイルスが入った試験管に、柿渋を加えたところ、柿渋が入っていない試験管と比較して、新型コロナウイルスの感染力が、1万分の1以下に抑られたということです。この柿渋を、飴やガムなどに混ぜて口に含むことで、新型コロナウイルスを予防する可能性があるということですが、実際に人に有効かどうかはまだ不明で、臨床研究を進めて行くとのことです。
コロナウイルスを撃退できるものを誰もが望んでいますよね。それが日本の研究でいち早くなされたら素晴らしいことです。

柿は母の思い出

柿渋と柿は少し話が違いますが、柿はビタミン豊富なため「柿が赤くなると、医者が青くなる」ということわざもあります。
だからなのか、柿好きの母は認知症こそあれど、大きな病気もせず、身体が丈夫です。
車の窓から、鈴なりの柿の木を見つけると、「あぁ!美味しそうな柿がいっぱい!」本当に嬉しそうに母は言います。老いた母が生まれ育った田舎の家々には柿の木があって、秋には美味しい柿を自分で穫って食べたのだとよく話してくれます。鳥が来て、実をつついてしまうとそこから腐ってしまうので、鳥との攻防戦で、熟し具合を見ながら、木に登って実を穫るのだそうです。そして、よく木から落ちたとも話してくれます。柿の木は滑りやすいのだそうです。
柿の木を見る度に、何度も同じ話を繰り返す母。
人は晩年になると、思い出で生きて行くのかなと考えさせられます。
だとしたら、ひとつひとつ、思い出を作ることを大切に生きたいなと思うようになりました。何気ない日常にも、感受性豊かに。ほんとうに、ひとつ、ひとつ。
だからこそ、司会をさせて頂く時にも意識をしています。
お客様の心に、印象に残り、思い出深いものになるように心を込めてつとめさせて頂きます。

森藤りか