司会・ビジネスボイスPro講師 森藤 りか

コラム 声×言葉

コラムVol.38『オンラインで好感度アップのコツ⑥語尾編Ⅲ』2021年5月

コラムVol.38『オンラインで好感度アップのコツ⑥語尾編Ⅲ』2021年5月

新緑の季節を迎え、マスクを暑く感じる日も出てきました。一方で、マスク2枚重ねの方もいらっしゃいます。私も司会の時には、2枚重ねにしています。万全の対策をとることも必要ですし、見た目からもお客様の安心感が高まるようです。ただ、より喋りにくくなるのは否めません。だからこそしっかり伝わるようにと、発声や発話の基本についてさらに強く意識するようになりました。なかでも重要な役割を果たす『語尾』について、今回も書きます。

語尾まで丁寧にはっきり話すこと

お話をされる時、語尾が消えてしまう人がいます。例えば「~とのことと伺っております。」の「ます」の部分がはっきり聞こえないという例です。きっと最後まで文章を伝える前に、気が抜けてしまうのでしょう。伝えたい内容は「~とのことと」の部分より前にあります。言うべきことは言ったという安心感か、頭の中では先走って次に話す内容を考えているのか、語尾にまで意識がない状態です。
語尾が消えて聞き取れないと、聞き手はストレスを感じ、聞く耳を持たなくなります。
直す方法としては「伺っ…」のあたりでスピードを落として徐々にゆっくり発音します。
センテンスが長くて息が続かないなら「~とのことと」の後に少しだけスッと息を吸って、気持ちを落ち着けて「伺っております。」と続けます。語尾まで丁寧にはっきり話すという意識をきちんと持つと良いです。
そして、語尾を言い終えた後、口を一旦、閉じます。「ます。」と言い終えた時、口は開いているので、意識して軽く口を閉じてみて下さい。語尾を下げやすくなります。「語尾は、大切な荷物をそっと置くようなイメージで」は、よく使われる例えです。

語尾の上げ下げ

少し難しい領域に入ってみたいと思います。印象良く伝えるためにアナウンサーが気をつけているのは「語尾(文末・助詞)の音を下げる」というポイントです。
それが、ニュース原稿を読む練習をしてみたら、なかなか下げられないのです。テレビやラジオのニュースに合わせて一緒に喋ってみると、音の高低差の違いに気付くと思います。なんとか合わせようと、助詞や語尾の所で顎を引いて目線を下げて発声するのですが、最初は下がり切らなくて、もどかしくなったことを覚えています。そんな風に頭を上げ下げしてニュースを読んでいるアナウンサーはいません。音階の上げ下げを身につけているからです。初めは3段階。出来るようになったら、5段階と、自分の声の音階の高低差を使いわける訓練をしました。
なぜ語尾を下げるのでしょうか?
語尾を下げると、落ち着いた雰囲気になります。ニュースには必要な落ち着きです。
そして、ニュースは喜怒哀楽を露にはしません。しかし、薄っぺらい表現では何も伝わりません。そこで、感情の起伏ではなく、音の上げ下げの幅で厚みを持たせ、豊かな表現を作るのです。語尾を上げるのと下げるのとでは、同じことを話していても全然違って聞こえるものなのです。

語尾で相手を動かす

一般的に、語尾を上げると、明るい雰囲気になります。
例えば、結婚式で必ず言う「〜ご入場です。」も、朗々と上げて言うパターンと、粛々と下げて言うパターンを使い分けます。会場のコンセプトや新郎新婦のイメージに合わせます。
それによって、ご参列の皆様の姿勢にも違いが生まれます。そして、その会の雰囲気が決まってきます。語尾にはそれほどの役割があります。

語尾で相手の動きが変わるお話は、また次回、続きを書きたいと思います。

森藤りか