司会・ビジネスボイスPro講師 森藤 りか

コラム 声×言葉

コラムVol.40『声と言葉と、○○と』2021年7月

コラムVol.40『声と言葉と、○○と』2021年7月

先日、聴覚障害を持つ新郎新婦と結婚式司会の打合せをさせて頂きました。やり取りには時間はかかりましたが、良いお式にしたいという気持ちは他の新郎新婦と全く同じで、おふたりのご意向を一生懸命伝えて下さいました。私は、コミュニケーションの方法についてあらためて見直す機会となりました。
今回、私が意識したことや感じたことなどを皆様にも共有させて頂きます。

手話通訳がある場合

私は、以前少しだけ手話を習ったことがありますが挫折しました。
古い話ですが、手話を使うドラマの影響という動機の軽さから、あきらめも速かったことを思い出しました。それは、さておき。
この新郎新婦はおふたりの間では手話でコミュニケーションをとっていました。幸い私の言うことも、新郎は聞こえていましたので、新郎が新婦へと手話通訳をして下さいました。
そして、昔習ったことは無駄ではなく、何に気をつければ良いのかは活かされました。手話通訳が入る時に注意することを知っていたからです。

  • 少しゆっくりめのテンポで話すこと。
  • 文章は短く要点を絞って分かりやすくまとめること。(なるべく句読点をひとつずつ。)
  • 話の区切りなどは様子を見て、適度に間をとること。
  • 通訳を介すると、ある程度タイムラグが生じます。通訳者が通訳し終えるまで次のアクションを待つようにします。
  • 通訳者を見るのではなくコミュニケーションの相手に視線を向けて話すことも大切です。

文字通訳がある場合

そして今回は、スマートフォンを使った文字通訳を併用されていらっしゃいました。話した言葉が、文字に変換されます。私が自己紹介をし、「森藤です。」というと、「火薬です。」と変換されました。これにおふたりも笑って下さったので、一気にその場が和んでよく話して下さるようになりました。
お約束の限られた時間内で、大切なお話を引き出すために、笑いは大きなきっかけになるものです。
さて、文字通訳は発した言葉が文字変換されるので、次のことに気を付けます。

  • 手話通訳と同様、文字変換と読んでいくのに時間が必要です。適度な間をとること。
  • 文章は短く要点を絞って分かりやすくまとめること。
  • 助詞も省略せず、きちんとした文法に則って話すこと。
  • あいまいな表現やまわりくどい表現は使わないこと。
  • 同音異義語がある言葉はなるべく使わないこと。

また、スマホなどの機能がない場合は筆談で良いと思います。その場合は、はっきりした読みやすい文字で濃く書くことです。オンライン、Zoomで打合せをすることもありますが、そのときも、筆談を加えたりもします。

当日の進行で想定できることと事前準備

出席されるゲストの中にも聴覚障害の方々がいらっしゃるそうです。言葉だけではなく、文字や視覚情報で伝えようと思います。新郎新婦には前もって、結婚式の流れや動きが分かる映像をご覧頂くのも安心でしょう。以前、中国や、ブラジルの方の結婚式司会をさせて頂いたことも有りますが、私自身も映像を見て、その国ならではの結婚式のイメージを掴んでおきましたし、その方々のコミュニケーション手段であるその言語を織り込んで話をしました。決してバイリンガルではありません。挨拶やキーワードなど、必要な言葉だけを勉強して使いました。今回も、少しの手話と、文字の視覚情報を準備していきます。
そして、見た目、しぐさ、表情、視線にも精一杯の祝福を込めて、素敵な結婚式にするためのお手伝いをさせて頂きます。

ノンバーバルコミュニケーションの大切さ

他言語にしろ手話にしろ、一朝一夕には身に付きません。しかし、かの有名な「メラビアンの法則」に勇気を頂いています。コミュニケーションにおいて、 ノンバーバルコミュニケーションが相手に与える印象は、場合によっては、言語情報よりも大きな影響を与えることがあるというものです。
感情と態度が矛盾したメッセージを人がどう受け止めるのか、人の言動が相手にどのような影響を及ぼすかを研究し「メラビアンの法則」を導きだしました。

  • 視覚情報 見た目、しぐさ、表情、視線・・55%
  • 聴覚情報 声の質や大きさ、話す速さ、口調・・38%
  • 言語情報 言葉そのものの意味、会話の内容・・7%

「楽しい」という言葉も、不機嫌な表情で、つまらなそうな態度で言えば、相手には「楽しい」より「不機嫌でつまらなそう」な印象の方が強く伝わる、ということを示しています。でも、本来の言葉通りの想いを言葉に乗せて、矛盾なく、見た目、しぐさ、表情、視線に気をつければ、より好印象で強く相手にを言葉を届けることが出来るということにもなります。
声と言葉に関する下の2つを足して、45%です。一番上の視覚情報の方が55%で、多いのです。視覚情報はとても大切なんです。

とは言うものの、表情という面では、このご時世、マスクに半分は隠されてしまいます。顔の部分で見えているのは、眉、目、おでこです。
この部分の動きだけで、「目は口ほどにものをいう」とか「顔に書いてある」と言われる程の伝達能力を身につけることが求められます。
続きは、次回です。

森藤りか