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コラム 声×言葉

コラムVol.50『きくチカラⅧ』2022年5月

コラムVol.50『きくチカラⅧ』2022年5月

焼きたてパンが並ぶベーカリー。小麦の香りに包まれながら、どれにしようかと選ぶのも楽しく、トングを使って自分でトレイに運ぶのも楽しくて好きです。先日体験したあるパン屋さんでの出来事から、大手牛丼チェーンにまつわる不愉快な一件も含め、言葉選びの大切さを考えます。

心を動かされたポップの言葉

レジ前のちょっとしたスペースにぽつんとひとつだけ置かれたパン。ポップには「お泊まりあんぱん100円」と書いてありました。丸っこい文字で何と書いてあるのかすぐには読めず、想像もつかなったので訊いてみました。店員さんからの答えは「昨日焼いたものなんです。」との事。そして、私が訪れたのが閉店に近い時間でしたので、このままだったらどうするのだろうと急に心配になって、可哀想な気持ちになり、買う予定ではなかったあんぱんを、つい買ってしまいました。ひょっとして私と出会うためにここで待っていてくれたのかしらとさえよぎったりも…。早速頂き、やわらかくて程よい甘さ、幸せな美味しさを味わう事が出来ました。売れ残ったら安くして翌日に売る事は、あり得る事ですよね。「訳あり」とか「徳用」というポップはよく見ます。しかし、「お泊まりあんぱん」このひとことで、情が沸き、ないはずのストーリーが生まれてしまいました。

擬人化表現の効果

果物のキウイが歌って踊ったり、女優さんがきつね=油揚げになって会話したり、イケメン俳優が化粧水になって女性の疲れたお肌と心を癒してくれたりと、擬人化表現のCMや広告は色々見かけます。「刀剣乱舞」「ウマ娘」も擬人化したことで注目されていますよね。「お泊まりあんぱん」も同じ手法ではないですか!郊外のスーパーの中にある小さなベーカリーの店員さんは、素晴らしい言葉選びでいい仕事をしました。今回自分が体験して感じたのですが、擬人化表現をされると、状況をありありと思い浮かべたり、そのものの意思を読み取ったり、気持ちを理解して一緒に悲しんだり、感動したりします。こうやって共感してしまうと、その商品に親しみが湧くし、肯定的な印象を持つようになります。買いたい、買うならこれ、そう思ってしまいました。

擬人化表現の効果

擬人化表現や比喩表現は、共感と親近感を感じさせてしまう手法だからこそ、何に例えるのか、どう例えるのかが、重要ですね。言葉選びは大切です。商品に対しても、お客様に対しても、愛情や尊敬の心を持っている事は大前提です。そして、言葉選びや表現方法の元となるものは、人柄や考え方です。人柄や思考の傾向はその人の環境から生まれるものだと思います。品格人格も必要です。

コラムを始めて、記念すべき50本目。自分自身も改めて考えます。
「わざわいは口より出でて、身をやぶる。さいわいは心より出でて、我をかざる。」

かやくりか