司会・ビジネスボイスPro講師 森藤 りか

コラム 声×言葉

コラムVol.64『言葉選びⅦ』2023年7月

コラムVol.64『言葉選びⅦ』2023年7月

あなたは、気が長いですか?気が短いですか?銀行、病院、役所、電車やバス、携帯電話の手続き、人気の行列店など、待つ場合は、どのくらいの時間ならイライラせずに待てますか?また、待たせてしまう側だとしたら、お客様への対応で何に気をつけますか?時間の感覚と言葉選びについてのコラムです。

「少々お待ち下さいませ。」

司会をする際にもお待たせする事があります。新郎新婦入場の予定時刻になってもGOサインが出ないので待っていたところ、新婦のドレスが何かしらでひっかかり破れてしまい、今、縫っていますと、スタッフから連絡が入ることもありました。お客様にスタートが遅れる事、お待たせしてしまう事をお伝えしなければいけません。なぜお待たせしているのか、本来なら、理由をお伝えする方が良いのですが、はっきりと理由を言えないケースです。時間がかかっている理由はぼやかして伝えます。「ご入場の準備が整いますまで、少々お待ち下さいませ。」

「今しばらくお待ち下さいませ。」

デリケートなドレスを縫うには、5分以上必要でした。もはや「少々」お待たせではない状態です。時間の感覚は、年齢によっても性格によっても差が出ますが、「少々」とは、時間にして2〜3分間くらいでしょうか。「少々お待ち下さい。」は、もう使えません。気の短い方からは、「少々じゃないでしょ。」とおしかりを受けてしまいかねません。5分以上お待たせする時には、「少々」よりももう少し眺めの感覚として捉えて頂ける言葉「しばらく」を使います。そして、2〜3分たった頃、まだもう少しお待たせしてしまうご案内を追加してお伝えします。追加でご案内を入れないと、お客様に心配をさせてしまったり、会場がざわついてしまいます。「お待たせをしております。おふたりのご準備が整い次第のご入場となります。今しばらくお待ち下さいませ。」

お客様の心の動きを想像して言葉を選ぶ

結局10分ほどお待たしてのご入場になりました。お待たせしてしまったけれど、気持ち良く新郎新婦をお迎えして頂けるよう、お伝えするのが司会者の役割です。本当に長い時間お待たせしてしまい、申し訳ございませんというお詫びの気持ちを真っ先に心を込めてお伝えします。そして、本日、この時間は、大切な新郎新婦のお祝いのひとときですから、お客様も暖かい気持ちで新郎新婦をお迎え頂けるようお願いをお伝えします。後々振り返った時にも、良き思い出となりますように。

森藤りか