司会・ビジネスボイスPro講師 森藤 りか

コラム 声×言葉

コラムVol.29『心地よい距離感とは』2020年8月

コラムVol.29『心地よい距離感とは』2020年8月

ソーシャルディスタンシング(人的接触距離の確保)。人との距離を1〜2メートルは取りましょうと言われています。先日、レジ待ちで並んでいる時のことですが、私の後ろの女性は全く距離感を気にしていない様子で、私が前に進むとすぐにぴたっとついてくるのです。「すみません。もう少し距離を取って頂けますか?」と思わず言ってしまいました。このご時世でも気にしていない人はいるものなのだと少し驚きました。今回は、物理的な距離と心的な距離について考えます。

大切な人を守るための距離

感染拡大を防ぐために、ソーシャルディスタンシング(人的接触距離の確保)、物理的な距離をとることは必要です。ただ、実際1〜2メートル離れてのコミュニケーションは、遠さを感じませんか?仕事や学校で新しい人間関係を作る時には、この遠さが不便なことも有りますし、今までとは違うやり方も必要だとも感じています。ネットを使ったリモートも実際に経験してみてメリットとデメリットがわかりました。顔を合わせて表情を見ながら会話が出来るという点では良いと思います。老人介護施設でもZOOMやMEETで入居者と家族の面会をして、笑顔が生まれました。久しぶりに元気そうな家族の様子が見れただけで嬉しいですよね。笑顔が生まれるということは、心の距離が近いということです。
デメリットとしては、コミュニケーションの武器になる間や空気感が読み取りにくいのは、生身の人間を目の前にしてこそ伝わる波動のようなものなので仕方がないのでしょう。ちょっとした表情の変化や目線の動き、応答のスピードからも相手の状態が伝わるものですが、Wi-Fi環境の良し悪しで止まってしまったり、画面を通してでは難しいと感じます。それらを想定して上手な使い方を模作したいと思います。

心的な距離感を間違えての失敗

距離感が近くなり過ぎて失敗したことがあります。何でも言い合える仲だと思っていた相手が、ある日突然、私の言葉でものすごく怒らせてしまいました。たまたま機嫌が悪いタイミングだったのかも知れません。また、怒りを露にすること自体が、近い距離感にある証拠なのかも知れません。ただ、心地よい関係ではないのは確かです。
逆に、距離感が遠すぎての失敗もあります。心配をかけないように気を使ったつもりが疎外感を感じさせてしまいました。話せば分かり合えることですが、それぞれの求める距離感に違いが有ったということでしょう。心地よいと思う距離感(パーソナル・スペース)は、人それぞれ違うことを学びました。

取材力・共感力

司会者として、初対面の方々と限られた時間内にする打合せでは、一気に距離感を縮めて必要なことを聞き出さなくてはいけません。
そこで私が気をつけていることは、4つあります。
①相手の必要としていることを考え、最善を尽くす気持ちを伝える。②相手に共感する。③相手の事を褒める。④たまにくだけた言葉遣いを入れて心を開く。
そして会話する中で、相手を観察し分析し、相手の本音や価値観を理解した上で人の心に寄り添いたいと思っています。

人的接触距離の確保を考える時、どういう人たちと接していたいかを選択しています。心地よい時間を過ごせる人間関係を大切にしていきたいですね。そして、これからは今まで以上に心ある言葉がけと相手を思い遣る言葉をしっかりと自分の言葉で伝えることが大切だと思っています。

森藤りか